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第6話「隣町に着いた新人冒険者」

 馬車がゆっくりと町の門をくぐる。

 ガルドは荷台から身を乗り出し、目の前に広がる町並みを眺めていた。

「ここが隣町か」

 王都ほど大きくはない。

 けれど、道の両側には店が並び、行き交う人々の姿も多い。

 冒険者らしき者たちもちらほら見える。

 ガルドにとっては、初めて訪れる町だった。

「結構、人がいるな」

「そうね。ここは王都と周辺の町をつなぐ街道沿いだから、冒険者も商人も多いのよ」

 セリナが説明する。

 その隣で、ガルドは別のものを見つけていた。

「……あれは?」

 視線の先にあったのは、店先に並べられた焼き肉だった。

 香ばしい匂いが、風に乗って流れてくる。

 ガルドの目が輝いた。

「肉だ」

「……やっぱりそこなのね」

 セリナが苦笑する。

 御者席からハンスの声が聞こえてきた。

「ははは! 到着して最初に気になるのが飯か!」

「腹が減ってるからな」

「朝飯も食べてなかったしね」

 セリナがそう言うと、ガルドは真剣な顔で頷いた。

「そうだった」

「忘れてたの?」

「依頼に集中してた」

「……食べることも忘れるくらい?」

「いや、途中からずっと腹が減ってた」

 セリナは思わず吹き出した。

「それ、集中してたって言わないでしょ」

 馬車は町の中央にある広場へと進んでいく。

 やがてハンスが馬車を止めた。

「よし。ここで荷物を降ろすぞ」

 ガルドも荷台から降りる。

 そして、すぐにハンスのところへ向かった。

「ハンス」

「なんだ?」

「この町で、一番うまい肉はどこだ?」

「……到着して最初の質問がそれか」

 ハンスは呆れたように笑った。

「この先に冒険者がよく行く酒場がある。飯もかなりうまいぞ」

「本当か?」

「ああ」

「行こう」

「荷物を降ろすのが先だ!」

 ハンスの言葉に、ガルドは足を止めた。

「……そうだった」

「忘れるなよ」

 ハンスが笑いながら荷物を降ろしていく。

 ガルドも手伝おうと荷台へ向かった。

 だが――。

「それ、俺が持つ」

 ガルドが荷物を一つ持ち上げる。

「お、おい! それは重いぞ!」

 ハンスが慌てて声をかける。

 しかし、ガルドは何でもないように肩へ担いだ。

「そうか?」

「それ、二人がかりで運ぶ予定だったんだが……」

「じゃあ、こっちも持つか?」

「いや、いい! それ以上は大丈夫だ!」

 ハンスは苦笑しながら首を振った。

 セリナはそんな二人を見て、くすりと笑う。

「ガルドって、本当に自分の力がどれくらいあるのか分かってないのね」

「普通だと思うけどな」

「普通の人は荷物を片手で持ち上げないのよ」

「そうなのか?」

「そうなの」

 やがて、すべての荷物が無事に降ろされた。

 ハンスは大きく息を吐く。

「助かったよ。二人とも」

「これくらいなら問題ない」

 ガルドはそう言って、再び町の中へ視線を向ける。

 そして――。

「ハンス」

「今度はなんだ?」

「肉」

「……分かった。食いに行くか」

「うん」

 ガルドの返事だけは、やけに早かった。


 ハンスに教えてもらった酒場へ向かう。

 店の扉を開けた瞬間、焼いた肉と香辛料の香りが鼻をくすぐった。

「……」

 ガルドが立ち止まる。

「どうしたの?」

 セリナが振り返る。

「ここだ」

「何が?」

「俺の求めていた場所だ」

「大げさね」

 セリナは笑いながら店へ入る。

 ハンスも後ろから続いた。

 三人で席につくと、ガルドは迷うことなく店員を呼んだ。

「肉を頼む」

「料理名を言ってくださいね」

「一番大きいやつ」

 店員が一瞬固まる。

 セリナは額に手を当てた。

「ガルド。ちゃんとメニューを見て」

「分かった」

 ガルドはメニューを開く。

 そして真剣な顔で眺め始めた。

「……これ」

「何?」

「全部、肉だな」

「そうね」

「全部食べていいか?」

「一人で?」

「うん」

 セリナは少し考えてから、笑った。

「……食べられるなら、いいんじゃない?」

「分かった」

 ガルドは店員に注文を伝える。

 ハンスはその様子を見ながら、楽しそうに笑っていた。

「いやぁ、面白い新人を連れてきたもんだ」

「新人だからな」

「そういう意味じゃないんだがな」

 やがて料理が運ばれてくる。

 焼いた肉。

 煮込んだ肉。

 串に刺した肉。

 大きな皿に盛られた肉。

 テーブルの上が、あっという間に肉だらけになった。

「いただきます」

 ガルドは嬉しそうに肉を口へ運ぶ。

「……うまい」

 その一言に、セリナも笑顔になる。

「そんなにおいしい?」

「ああ」

 ガルドは夢中で食べ続ける。

 セリナはそんなガルドを眺めながら、自分の料理を口に運んだ。

「ふふっ」

「どうした?」

「なんでもない」

 セリナは少しだけ笑った。

 こうして三人は、護衛依頼の疲れを癒やしながら、隣町での食事を楽しんだ。

 ――そして。

 食事を終えたガルドたちは、いよいよ冒険者としてこの町を見て回ることになる。

 そこでガルドたちを待っていたのは、思いがけない新たな依頼だった。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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