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第7話「新人冒険者、肉のために依頼を選ぶ」

 昼食を終えたガルドたちは、ハンスと別れて町の冒険者ギルドへ向かっていた。

 護衛依頼は無事に終わった。

 報酬も受け取っている。

 つまり――。

「セリナ」

「なに?」

「次の依頼を受けよう」

「もう?」

「腹が減る前に受けたい」

「……食べたばかりでしょ」

 セリナは呆れたように笑った。

 だが、ガルドの足取りは軽い。

 初めて訪れた町。

 初めての冒険者ギルド。

 そして、まだ見たことのない魔物。

 ガルドにとっては楽しみなことばかりだった。


 ギルドの扉を開ける。

「いらっしゃいませ」

 受付の女性が笑顔で迎えてくれた。

「依頼を探したい」

「はい。どのような依頼をお探しですか?」

「肉が手に入るやつ」

「……肉、ですか?」

 受付嬢が目を瞬かせる。

 隣にいたセリナが苦笑した。

「この人、魔物の肉を食べるのが好きなの」

「ああ、なるほど」

 受付嬢は納得したように頷いた。

「でしたら、討伐依頼はいかがでしょう?」

「討伐!」

 ガルドの目が輝く。

「魔物を倒して、その肉を持ち帰れる依頼もありますよ」

「それにしよう」

「即決ね……」

 セリナが小さく笑う。

 受付嬢は依頼書を何枚か取り出した。

「こちらはいかがでしょう?」

 一枚目。

 近隣の森に出る小型魔物の討伐。

 二枚目。

 街道周辺に出没する魔物の討伐。

 三枚目。

 町の北にある草原で確認された魔物の調査と討伐。

「どれが一番、肉がうまい?」

「そこは私には分かりません……」

 受付嬢が困ったように笑う。

 セリナが依頼書を覗き込んだ。

「この草原の依頼、最近出てきたものなのね」

「はい。ここ数日、魔物の目撃情報が増えているんです」

「種類は?」

「まだ正確には分かっていません」

 ガルドは依頼書を見つめる。

「分からない?」

「はい。遠くから見たという報告しかなくて」

「じゃあ、行ってみれば分かるのか」

「そういうことになりますね」

 ガルドは頷いた。

「これにしよう」

「決めるの早すぎない?」

「知らない魔物なら、肉も知らない味かもしれない」

「そこなのね……」

 セリナは苦笑した。

 受付嬢も思わず笑っている。

「では、こちらの依頼で受付いたしますね」

「頼む」

 こうして、ガルドとセリナは新たな依頼を受けることになった。


 ギルドを出る。

 町の北門を抜けると、そこには広い草原が広がっていた。

 風が草を揺らしている。

 遠くには小さな森も見える。

「ここから北に進めばいいみたいね」

 セリナが依頼書を確認する。

「魔物が出る場所は、その先か」

「ええ」

 ガルドは大剣を背負い直した。

「楽しみだな」

「魔物が?」

「うん」

「……本当に戦うのが好きなのね」

「戦うのも好きだけど」

 ガルドは少し考えた。

「そのあとに肉があるのがいい」

「はいはい」

 セリナが笑う。

 二人は草原を歩いていく。

 しばらく進んだところで、セリナが足を止めた。

「待って」

 ガルドも止まる。

「どうした?」

「何かいる」

 セリナは弓を構え、前方を見つめる。

 草むらが揺れている。

 風ではない。

 何かがこちらへ近づいてきている。

 ガルドも大剣を抜いた。

「魔物か?」

「たぶん」

 草むらから、低い唸り声が響く。

 次の瞬間――。

 巨大な影が草原へ飛び出した。

「来るわよ!」

 セリナが弓を引き絞る。

 ガルドは大剣を構えた。

 目の前に現れたのは、これまで見たことのない巨大な魔物だった。

「……でかいな」

 ガルドが呟く。

 魔物が大きく口を開く。

 そして、二人へ向かって駆け出した。

「ガルド!」

「ああ!」

 大剣を握る手に力が入る。

 新人冒険者ガルド。

 隣町での最初の討伐依頼が――。

 今、始まった。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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