昼食を終えたガルドたちは、ハンスと別れて町の冒険者ギルドへ向かっていた。
護衛依頼は無事に終わった。
報酬も受け取っている。
つまり――。
「セリナ」
「なに?」
「次の依頼を受けよう」
「もう?」
「腹が減る前に受けたい」
「……食べたばかりでしょ」
セリナは呆れたように笑った。
だが、ガルドの足取りは軽い。
初めて訪れた町。
初めての冒険者ギルド。
そして、まだ見たことのない魔物。
ガルドにとっては楽しみなことばかりだった。
ギルドの扉を開ける。
「いらっしゃいませ」
受付の女性が笑顔で迎えてくれた。
「依頼を探したい」
「はい。どのような依頼をお探しですか?」
「肉が手に入るやつ」
「……肉、ですか?」
受付嬢が目を瞬かせる。
隣にいたセリナが苦笑した。
「この人、魔物の肉を食べるのが好きなの」
「ああ、なるほど」
受付嬢は納得したように頷いた。
「でしたら、討伐依頼はいかがでしょう?」
「討伐!」
ガルドの目が輝く。
「魔物を倒して、その肉を持ち帰れる依頼もありますよ」
「それにしよう」
「即決ね……」
セリナが小さく笑う。
受付嬢は依頼書を何枚か取り出した。
「こちらはいかがでしょう?」
一枚目。
近隣の森に出る小型魔物の討伐。
二枚目。
街道周辺に出没する魔物の討伐。
三枚目。
町の北にある草原で確認された魔物の調査と討伐。
「どれが一番、肉がうまい?」
「そこは私には分かりません……」
受付嬢が困ったように笑う。
セリナが依頼書を覗き込んだ。
「この草原の依頼、最近出てきたものなのね」
「はい。ここ数日、魔物の目撃情報が増えているんです」
「種類は?」
「まだ正確には分かっていません」
ガルドは依頼書を見つめる。
「分からない?」
「はい。遠くから見たという報告しかなくて」
「じゃあ、行ってみれば分かるのか」
「そういうことになりますね」
ガルドは頷いた。
「これにしよう」
「決めるの早すぎない?」
「知らない魔物なら、肉も知らない味かもしれない」
「そこなのね……」
セリナは苦笑した。
受付嬢も思わず笑っている。
「では、こちらの依頼で受付いたしますね」
「頼む」
こうして、ガルドとセリナは新たな依頼を受けることになった。
ギルドを出る。
町の北門を抜けると、そこには広い草原が広がっていた。
風が草を揺らしている。
遠くには小さな森も見える。
「ここから北に進めばいいみたいね」
セリナが依頼書を確認する。
「魔物が出る場所は、その先か」
「ええ」
ガルドは大剣を背負い直した。
「楽しみだな」
「魔物が?」
「うん」
「……本当に戦うのが好きなのね」
「戦うのも好きだけど」
ガルドは少し考えた。
「そのあとに肉があるのがいい」
「はいはい」
セリナが笑う。
二人は草原を歩いていく。
しばらく進んだところで、セリナが足を止めた。
「待って」
ガルドも止まる。
「どうした?」
「何かいる」
セリナは弓を構え、前方を見つめる。
草むらが揺れている。
風ではない。
何かがこちらへ近づいてきている。
ガルドも大剣を抜いた。
「魔物か?」
「たぶん」
草むらから、低い唸り声が響く。
次の瞬間――。
巨大な影が草原へ飛び出した。
「来るわよ!」
セリナが弓を引き絞る。
ガルドは大剣を構えた。
目の前に現れたのは、これまで見たことのない巨大な魔物だった。
「……でかいな」
ガルドが呟く。
魔物が大きく口を開く。
そして、二人へ向かって駆け出した。
「ガルド!」
「ああ!」
大剣を握る手に力が入る。
新人冒険者ガルド。
隣町での最初の討伐依頼が――。
今、始まった。
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