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第2話「冒険者になって、初めて受けた依頼」

 それは――。

「薬草採取?」

「そうよ」

 セリナは依頼書を指で叩いた。

「森の中に生えている薬草を集めてくるだけ。危険度も低いし、新人にはちょうどいいと思うわ」

「なるほど!」

 ガルドは大きく頷いた。

「じゃあ、行こう!」

「待って」

「なんだ?」

「その大剣、置いていかない?」

「ダメだ」

「即答ね」

 ガルドは背中の大剣を軽く叩いた。

「こいつは俺の相棒だからな」

「……まあ、いいけど」

 セリナは苦笑した。

 こうして二人は、街の外へ向かった。

 目的地は、街から少し離れた森。

 薬草が多く採れることで知られている場所だ。

 森に入ってしばらく歩くと、セリナが足を止めた。

「ほら。あそこ」

「どこだ?」

「あの木の根元。葉っぱが三枚ついてるでしょ」

「……ああ」

 ガルドはしゃがみ込む。

「これか?」

「そう。根を傷つけないように採ってね」

「分かった!」

 ガルドは薬草を掴んだ。

 そして。

「よいしょ!」

 ブチッ!

 薬草が抜けた。

 ……土ごと。

「…………」

「…………」

 セリナが無言で見つめている。

「採れたぞ!」

「うん……採れたね」

「いっぱい採ったほうがいいのか?」

「依頼では十本よ」

「じゃあ、あと九本だな!」

 ガルドは周囲を見回した。

「おっ」

 そこにもある。

 あっちにもある。

 さらにその奥にも。

「いっぱいあるぞ!」

「待って!」

 セリナが慌てて止める。

「全部採っちゃダメ!」

「なんでだ?」

「薬草はまた生えてくるけど、根まで抜いたら時間がかかるの!」

「そうなのか」

「そうなの」

「じゃあ、気をつける」

「最初からお願いね」

 セリナは苦笑しながら、薬草を一本ずつ採っていく。

 その隣で、ガルドも真似をする。

 今度は慎重に。

 指先で茎をつまみ――。

「……こうか?」

「そうそう」

 スポッ。

「…………」

 また根っこごと抜けた。

「なんで!?」

「俺、力加減が苦手なんだ」

「それ、冒険者として結構大事な能力なんだけど……」

 セリナはため息をついた。

 それでも、なんだかおかしくなって笑ってしまう。

「ふふっ」

「どうした?」

「いや。ガルドって面白いなと思って」

「そうか?」

「ええ」

 そんなやり取りをしながら、二人は森の奥へ進んでいった。

 しばらくすると。

「……ガルド」

「ん?」

「止まって」

 セリナの声が変わった。

 ガルドも足を止める。

「何かいるのか?」

「ええ」

 セリナは背中から弓を取り出した。

 森の奥。

 木々の間から、低い唸り声が聞こえる。

「魔物ね」

「どんな奴だ?」

「まだ分からない」

 セリナが目を細める。

 すると。

 ガサッ。

 茂みが揺れた。

 次の瞬間――。

 巨大な狼が飛び出してきた。

「ガルド!」

「任せろ!」

 ガルドは大剣を抜いた。

 狼が牙を剥き、こちらへ飛びかかってくる。

 セリナが弓を引く。

 だが――。

「待って!」

 ガルドが前へ出た。

「俺がやる!」

「え?」

 狼の爪が迫る。

 ガルドは大剣を構え――。

 ガキィンッ!

 爪を真正面から受け止めた。

「おお!」

 ガルドは嬉しそうに笑う。

「結構強いな!」

「そこ、喜ぶところ!?」

 狼がさらに力を込める。

 ガルドの足元の土が沈んだ。

「よし」

 ガルドは大剣を押し返す。

「今度はこっちの番だ!」

 ブンッ!

 大剣が振り抜かれる。

 狼は咄嗟に横へ飛んだ。

 ドゴォン!!

 大剣が地面に叩きつけられ、土が大きく跳ね上がる。

「……すごい」

 セリナが呟いた。

 ガルドは地面にできた大きな跡を見た。

「……ちょっと強く振りすぎたか?」

「ちょっとどころじゃないと思うけど」

 狼は警戒するように唸っている。

 ガルドは大剣を構え直した。

「来い!」

 狼が再び飛びかかる。

 今度は――。

 一瞬だった。

 ガルドが横へ踏み込み、大剣を振る。

 ズンッ!!

 刀身が狼の胴を捉え、狼は地面を転がっていく。

 そして、そのまま動かなくなった。

 森が静かになる。

「…………」

「…………」

 セリナはしばらく黙っていた。

「ガルド」

「なんだ?」

「今の、何?」

「剣で倒した」

「それは見れば分かるわ」

「じゃあ何だ?」

「……普通の新人冒険者は、あんな大きな魔物を一撃で吹き飛ばさないの」

「そうなのか?」

「そうよ」

 ガルドは少し考える。

「でも、倒せたぞ」

「そうね……」

 セリナは額に手を当てた。

「まあ、いいわ」

「いいのか?」

「依頼の薬草も集まったし」

 セリナが採取袋を見る。

「これなら報酬ももらえるわ」

「本当か!」

 ガルドの目が輝いた。

「報酬って肉もあるのか?」

「お金よ」

「……肉は?」

「自分で買って」

「そうか!」

 ガルドは倒れた狼を見る。

「じゃあ……」

「……え?」

 ガルドは狼を指差した。

「食えるのか?」

「…………」

 セリナは数秒黙った。

 そして。

「ギルドに聞いてみましょうか」

「おう!」

 こうして。

 薬草採取のはずだった初依頼は。

 なぜか巨大な狼を連れて帰る依頼へと変わった。

 ――この日、冒険者ギルドに。

 新人ガルドについての、妙な噂が広まり始めることになる。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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