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第1話「大剣しか使えない俺は、冒険者になった」

 冒険者になる。

 それは、ガルドがずっと憧れていたものだった。

 剣を振るい、魔物を倒し、困っている人を助ける。

 そして、依頼をこなして金を稼ぐ。

 ――何より。

「肉が食える!」

 ガルドは冒険者ギルドの前で、拳を握りしめた。

 今日から俺も、冒険者だ。

 そう思うだけで胸が高鳴る。

 もっとも。

「……その剣、本当に使うんですか?」

 受付嬢の視線は、ガルドの背中に向いていた。

「もちろん!」

 ガルドが振り返る。

 そこにあるのは――一本の大剣。

 あまりにも巨大だった。

 普通の冒険者が使う剣の二倍。

 いや、下手をすれば三倍近くある。

 柄だけでも両手でしっかり握らなければならず、刀身は見るからに重そうだ。

 床に立てかけているだけなのに、周囲の冒険者たちがちらちらと様子をうかがっている。

「それ……持てるんですか?」

「持てるぞ」

「……振れます?」

「振れるぞ」

「本当に?」

「本当に」

 受付嬢は少し困ったような顔をした。

「ですが、冒険者の方でも普通はもう少し扱いやすい武器を……」

「普通の剣だと軽すぎるんだ」

「…………え?」

 ガルドは真顔だった。

「剣って、もっと重いものじゃないのか?」

「いえ……普通はそれなりに軽いものです」

「そうなのか?」

 ガルドは首をかしげる。

 昔からそうだった。

 訓練用の剣を持っても軽い。

 少し大きめの剣を持っても軽い。

 ならば、と大きな剣を選んでいった結果。

 最終的に辿り着いたのが、この大剣だった。

 ガルドにとっては、ようやく「剣らしい重さ」を感じられる武器だった。

「まあ、本人が使えると言うなら……」

 受付嬢は半信半疑のまま、登録用紙を差し出した。

「では、こちらに記入してください」

「分かった!」

 ガルドは勢いよくペンを取った。

 名前。

 年齢。

 希望する活動内容。

 必要事項を書き終えると、受付嬢が確認する。

「ガルドさんですね。剣士、と」

「そうだ!」

「武器は……大剣」

「そうだ!」

「他に使える武器は?」

「ない!」

「魔法は?」

「使えない!」

「…………」

 受付嬢の手が止まった。

「本当に大剣だけですか?」

「大剣だけだ!」

 ガルドは胸を張った。

 その堂々とした姿を見て、受付嬢は小さく息を吐く。

「分かりました。では、冒険者登録を――」

 そのときだった。

 ギルドの奥から、木製の訓練用人形が運ばれてきた。

 誰かが訓練をするらしい。

 ガルドはそれを見つめた。

「……なあ」

「はい?」

「あれ、斬っていいか?」

「え?」

「俺の大剣、ちゃんと使えるって証明したい」

 受付嬢が答えるより早く。

 ガルドは背中から大剣を抜いた。

 ――ズンッ。

 巨大な刀身が床を離れる。

 その瞬間。

 ギルド内の空気が変わった。

「おい……」

「なんだ、あの剣……」

「新人か?」

 周囲から視線が集まる。

 ガルドは気にしない。

 ただ、目の前の訓練用人形を見ていた。

「じゃあ、いくぞ」

 両手で大剣を握る。

 そして。

 ブンッ!

 大剣が横薙ぎに振り抜かれた。

 次の瞬間。

 ズバァンッ!!

 訓練用人形が、真っ二つになった。

「…………」

「…………」

 ギルド内が静まり返る。

 ガルドは大剣を肩に担いだ。

「ほら」

 受付嬢が固まっている。

「は、はい……」

 受付嬢は、なんとか頷いた。

 周囲の冒険者たちはざわざわと騒ぎ始める。

「今の見たか?」

「新人だろ?」

「大剣をあんな速度で……?」

「というか、あの訓練用人形って結構頑丈だぞ」

 ガルドは首をかしげた。

「なんだ?」

「いや……」

 受付嬢が苦笑する。

「ガルドさん」

「ん?」

「あなた、もしかして……かなり強いんじゃないですか?」

「……そうなのか?」

 ガルドは本気で分からなかった。

「俺、普通だと思うけど」

「…………」

 受付嬢は何も言わなかった。

 こうして。

 自分の強さをいまひとつ理解していない大剣使い、ガルドは。

 冒険者としての第一歩を踏み出した。

 ――そして、この日。

 彼の人生を大きく変えることになる一人の女性が、ギルドに姿を現す。

「すみません。森の薬草採取を受けたいんですけど」

 振り返ったガルドの目に映ったのは。

 弓を背負い、腰に二本の短剣を携えた、美しい女性だった。

 女性はガルドの巨大な大剣を見る。

「……それ、使うの?」

「使うぞ!」

「……重そうね」

「ちょうどいい重さだ!」

「ふふっ。そう」

 女性は少し笑った。

「私はセリナ。よろしくね、新人さん」

「俺はガルドだ!」

 こうして二人は出会った。

 このときガルドは、まだ知らなかった。

 目の前の女性とともに。

 数え切れないほどの魔物と戦い。

 古代遺跡へ挑み。

 やがて世界の命運を左右する戦いに巻き込まれていくことを。

 そして――。

「ねえ、ガルド」

「なんだ?」

「その大剣、本当に振れるの?」

「振れるぞ!」

「じゃあ、一緒に依頼行ってみる?」

「肉は出るか?」

「……そこ?」

 これが。

 大剣しか使えない男と、一人の弓使いの。

 長い冒険の始まりだった。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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