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第9話「新人冒険者、巨大な魔物を持ち帰る」

 町へ戻る道。

 ガルドは、倒した巨大な魔物を肩に担いで歩いていた。

 その隣をセリナが歩いている。

「ねえ、ガルド」

「なんだ?」

「それ、本当に重くないの?」

「別に」

「……そう」

 セリナはもう何も言わなかった。

 最初は驚いていた。

 けれど、ここ数日のガルドを見ていると、だんだん驚くことにも疲れてくる。

 大剣を軽々と振り回す。

 巨大な狼を一人で倒す。

 馬車を押して動かす。

 そして今度は、巨大な魔物を担いで歩いている。

「普通じゃないわね」

「何が?」

「なんでもない」

「そうか」

 ガルドは気にせず歩き続けた。

 頭の中にあるのは、やはり一つ。

「……肉」

「まだ言ってるの?」

「だって気になるだろ」

「私は魔物の正体のほうが気になるけど」

「それも気になる」

 少しだけ間を置いて。

「でも肉も気になる」

「はいはい」

 セリナは笑った。


 やがて町の門が見えてくる。

 門番が二人の姿に気づいた。

「……ん?」

「おい、あれはなんだ?」

「魔物……だよな?」

 近づいてくるガルドを見て、門番たちがざわつき始める。

「ちょっと待て!」

 一人の門番が駆け寄ってきた。

「その魔物、どうしたんだ?」

「倒した」

「……倒した?」

「ああ」

 門番は魔物を見る。

 それからガルドを見る。

 もう一度、魔物を見る。

「これを……?」

「俺とセリナで」

 セリナが頷く。

「そうよ」

「そうか……」

 門番はしばらく言葉を失っていた。

「と、とりあえず気をつけて運んでくれ」

「分かった」

 ガルドはそのまま歩き出す。

 門番は二人の背中を見送りながら呟いた。

「……あんな魔物、どうやって倒したんだ?」


 冒険者ギルドへ戻る。

 扉を開けた瞬間――。

 ギルド内の視線が一斉に集まった。

「……なんだ?」

「おい、あれ……」

「でかすぎないか?」

 ガルドが魔物を担いでいる。

 それだけで、ギルド内がざわめき始める。

 受付嬢も目を丸くした。

「お、お帰りなさいませ……」

「依頼、終わった」

「……はい?」

 ガルドは魔物を床へ下ろした。

 ドンッ!

 大きな音が響く。

「これが討伐した魔物だ」

「……」

 受付嬢は魔物を見つめる。

「えっと……」

「この魔物、知ってるか?」

「少々お待ちください!」

 受付嬢は慌てて資料を探し始めた。

 周囲の冒険者たちも集まってくる。

「なんだ、こいつ?」

「見たことないぞ」

「最近、草原に出たっていう魔物じゃないか?」

「でも、こんなにデカいのか?」

 やがて受付嬢が一冊の資料を持って戻ってきた。

「ありました!」

 魔物の姿を確認する。

 そして、驚いたように声を上げた。

「これは……グランドファングです!」

「グランドファング?」

 セリナが聞き返す。

「はい。大型の肉食魔物で、非常に力が強いことで知られています」

 受付嬢は説明を続ける。

「この魔物は、普段はもっと北の地域に生息しているはずなんですが……」

「じゃあ、なんで草原に?」

「それが分からないんです」

 ギルド内がざわつく。

 ガルドはグランドファングを見る。

「強い魔物なのか?」

「はい。討伐ランクで言えば――」

 受付嬢が少し言葉を止めた。

「Cランク相当です」

「Cランク……」

 セリナが驚く。

 ガルドは首を傾げた。

「それって強いのか?」

「新人が簡単に倒せる相手じゃないわよ」

 セリナが答える。

「そうなのか」

「そうなの」

 ガルドは少し考える。

「でも倒せた」

「だから、それがおかしいのよ」

 セリナが苦笑する。

 周囲の冒険者たちも、ガルドを見ている。

「新人って言ってたよな?」

「ああ」

「じゃあ、あいつ何者なんだ?」

「大剣一本で倒したのか?」

 ガルドはそんな視線を気にすることなく、受付嬢に尋ねた。

「で」

「はい?」

「これ、食べられるか?」

「……」

 受付嬢が固まった。

 セリナが吹き出す。

「やっぱりそこなのね!」

「大事なことだからな」

 受付嬢は困ったように笑った。

「食べられますよ」

「本当か?」

 ガルドの目が輝く。

「はい。グランドファングの肉は、かなり美味しいことで知られています」

「……!」

 ガルドが魔物を見る。

「最高だな」

 その瞬間。

 周囲の冒険者たちから笑い声が起こった。

「こいつ、本当に肉のことしか考えてないのかよ!」

「Cランク魔物を倒して最初に気にするのが肉か!」

 ガルドは不思議そうに周囲を見る。

「なんで笑ってるんだ?」

「気にしなくていいわ」

 セリナが笑いながら答えた。

「あなたはそのままでいいと思う」

「そうか?」

「うん」

 受付嬢も笑顔になる。

「では、討伐報酬と素材の買い取りについて説明しますね」

「肉は?」

「もちろん、肉も買い取れます」

「……自分で食べたい」

「では、一部をお渡しできますよ」

「頼む」

 ガルドは即答した。

 こうして、隣町での初めての討伐依頼は無事に終了した。

 だが――。

 ギルドには、別の問題が残っていた。

 なぜ本来この地域にいないはずのグランドファングが、草原に現れたのか。

 その理由を調べるため、ギルドは新たな調査を始めることになる。

 そしてガルドたちは――。

 その調査に関わることになるのだった。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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