グランドファングの解体と素材の買い取りを終えたガルドたちは、再び冒険者ギルドの受付へ戻ってきた。
「こちらが今回の討伐報酬です」
受付嬢から袋を渡される。
ガルドは中身を確認した。
「結構あるな」
「Cランク相当の魔物ですからね。それに、素材の状態もかなり良かったです」
「そうか」
ガルドは満足そうに頷いた。
そして――。
「肉は?」
「ちゃんとありますよ」
「よし」
ガルドは嬉しそうに笑った。
セリナはその様子を見て、くすくすと笑う。
「報酬より肉のほうが嬉しそうね」
「報酬があれば肉も買えるだろ」
「そういう考え方なのね」
そんな二人のやり取りを見ていた受付嬢が、少し困ったような顔をした。
「実は、お二人にお願いしたいことがあるんです」
「お願い?」
セリナが聞き返す。
「はい」
受付嬢は一枚の紙を取り出した。
「今回のグランドファングについてです」
ガルドとセリナの表情が変わる。
「やっぱり、普通じゃなかったのね」
「はい」
受付嬢が頷く。
「グランドファングは、本来この町の北にある山岳地帯に生息しています。ですが、今回発見された場所は町の近くの草原です」
「かなり離れているの?」
「そうですね。魔物が自分から移動した可能性もありますが……」
受付嬢は地図を広げる。
「最近、同じような報告がいくつか出ているんです」
セリナが地図を覗き込む。
「他にも?」
「はい。普段は森の奥にいるはずの魔物が街道近くで目撃されたり、森から出てくる魔物が増えたりしています」
「それは気になるわね」
ガルドは地図を見る。
「どこを調べるんだ?」
「こちらです」
受付嬢が指を差した。
町の北。
そこには広い森が描かれている。
「北の森です」
「森か」
「はい。数日前から、森の奥で魔物の動きがおかしいという報告があります」
ガルドは地図を見つめる。
「強い魔物がいるのか?」
「まだ分かりません」
「じゃあ、見に行けば分かるな」
セリナがガルドを見る。
「行くつもり?」
「依頼なんだろ?」
「そうだけど……」
受付嬢が説明を続ける。
「今回お願いしたいのは、あくまで調査です。危険な魔物を見つけた場合は無理に戦わず、戻ってきてください」
「分かった」
ガルドは素直に頷いた。
セリナも少し考えたあと、頷く。
「私も行くわ」
「決まりだな」
二人は依頼を引き受けることにした。
ギルドを出る。
夕方の町には、少しずつ帰宅する人々が増えていた。
ガルドは隣を歩くセリナに尋ねる。
「明日は北の森か」
「そうね」
「森なら、魔物もいるだろうな」
「たぶんね」
「肉もあるかな」
「……そこは期待しないほうがいいと思う」
「なんでだ?」
「調査だから」
「魔物を見つけたら?」
「必要なら倒す」
「じゃあ肉も手に入るな」
「……そういうところだけは話が早いのよね」
セリナが笑う。
ガルドも笑った。
そして二人は、今日の宿を探すため町の通りを歩いていく。
その途中。
「そういえば」
セリナが口を開いた。
「ガルドって、明日もその大剣で行くの?」
「ああ」
「森の中だと、少し振りにくいかもしれないわよ?」
「大丈夫だ」
「本当に?」
「大剣が一番使いやすいからな」
ガルドは背中の大剣を軽く叩いた。
「俺にはこれが一番合ってる」
「……そう」
セリナは大剣を見る。
巨大な刀身。
普通の冒険者なら、持ち歩くだけでも大変そうな武器だ。
けれど、ガルドにとってはそれが当たり前。
「じゃあ、明日も頼りにしてるわ」
「ああ」
ガルドは笑った。
その夜。
二人は宿で食事をしていた。
テーブルの上には、今日手に入れたグランドファングの肉を使った料理も並んでいる。
「……うまい」
ガルドは幸せそうな顔で肉を食べていた。
「そんなに気に入った?」
「ああ」
セリナも一口食べる。
「確かに美味しいわね」
「だろ?」
「でも、明日は調査なんだから、ちゃんと起きてね」
「分かってる」
「朝ご飯も食べてから行くのよ」
「……分かった」
ガルドが少しだけ気まずそうに頷く。
「今度は忘れない」
「そこは覚えてたのね」
二人は笑った。
こうして、隣町での一日は終わった。
そして翌朝。
ガルドとセリナは、北の森へ向かうことになる。
まだ二人は知らなかった。
その森の奥で――。
今回の魔物の異常な行動につながる何かが、静かに待っていることを。
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