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第3話「新人冒険者、なぜか注目される」

 冒険者ギルドに戻ってきた俺たちを見て、受付嬢が目を丸くした。

「……おかえりなさい」

「ただいま!」

 俺は元気よく答えた。

 そして、背中に担いでいたものを床へ下ろす。

 ドンッ!!

「…………」

「…………」

 ギルド内の空気が止まった。

「……ガルドさん」

「なんだ?」

「それは……?」

「狼だ!」

「それは見れば分かります!」

 受付嬢が思わず声を上げた。

 俺が持って帰ってきたのは、森で襲ってきた巨大な狼。

 普通の狼より一回りどころか、二回り以上大きい。

 牙も爪も立派だ。

 俺としては、なかなか美味しそうな肉だと思う。

「これ、食えるか?」

「そこですか!?」

「重要だろ?」

「重要……なんでしょうか」

 受付嬢が頭を抱える。

 すると、周囲にいた冒険者たちが集まってきた。

「おい、これって……」

「ホーンウルフじゃないか?」

「新人が?」

「一人で倒したのか?」

 ざわざわと声が広がっていく。

 俺はよく分からなかった。

「セリナ、どうした?」

「……ガルド」

「ん?」

「あなた、自分が何を倒したのか分かってる?」

「狼」

「魔物の種類としては?」

「……狼?」

「そうじゃなくて」

 セリナは少し呆れたように笑った。

「ホーンウルフ。普通なら、低ランクの冒険者が一人で相手をするような魔物じゃないの」

「そうなのか?」

「そうよ」

「でも、そんなに強くなかったぞ」

「…………」

 セリナが黙った。

 周囲からも、

「強くなかったって……」

「一撃だったらしいぞ」

「嘘だろ?」

 そんな声が聞こえてくる。

 俺は首をかしげた。

「一撃じゃなかったぞ」

 セリナが驚いた顔をする。

「え?」

「最初の一回は避けられた」

「……ああ」

 セリナが納得したように頷く。

「なるほど。そういうことね」

「二回目で当たった」

「…………」

 セリナは再び黙った。

 受付嬢が恐る恐る尋ねる。

「……二回、剣を振ったんですか?」

「そうだぞ」

「その二回で?」

「うん」

 受付嬢の顔が引きつった。

「……すごいですね」

「そうか?」

「はい……」

 どうやら、みんな大げさに驚いている。

 俺としては、剣を振って魔物を倒しただけなのだが。

 そんなことより。

「それで、この狼は食べられるのか?」

 俺はもう一度聞いた。

「……確認します」

 受付嬢が諦めたように答えた。

「少々お待ちください」

 しばらくすると、解体担当の職員がやってきた。

 狼を確認し、何度か頷く。

「ホーンウルフの肉ですね。食べられますよ」

「本当か!?」

「ただ、毛皮や牙にも価値があります。状態もかなり良いですね」

「肉は?」

「肉も買い取れます」

「よし!」

 俺は拳を握った。

「今日は肉だ!」

「……本当に肉のことしか考えてないのね」

 隣でセリナが笑っている。

「だって美味いんだろ?」

「まあ……そうだけど」

「じゃあ問題ないな!」

「何が問題ないのよ」

 そんな会話をしていると。

「なあ」

 後ろから声がした。

 振り返る。

 そこには、何人かの冒険者が立っていた。

「お前、本当にその大剣だけなのか?」

「そうだぞ」

「魔法は?」

「使えない」

「弓とか短剣は?」

「使えない」

「じゃあ、あの魔物を大剣だけで?」

「そうだ」

 男は信じられないという顔をした。

「……変わった新人だな」

「よく言われる」

「誰に?」

「今、初めて言われた」

「じゃあ、よく言われるって何だよ!」

 ギルド内に笑いが起きた。

 俺も笑った。

 どうやら、冒険者ギルドという場所は面白いところらしい。

 その後。

 報酬を受け取り、ホーンウルフの肉も買い取ってもらった。

 肉はかなりの量になった。

「これ、全部食べていいのか?」

「一人では無理でしょ」

 セリナが言う。

「じゃあ、セリナも食べるか?」

「え?」

「一緒に食べればいい」

「……いいの?」

「もちろんだ」

 セリナは少しだけ目を丸くして。

「じゃあ、いただこうかな」

 そう言って笑った。

 俺たちはその日の夜、街の食堂へ向かった。

 料理されたホーンウルフの肉が皿に乗って運ばれてくる。

 香ばしい匂いが広がった。

「うまそうだ!」

「ふふっ。子供みたい」

「いただきます!」

 俺は一口食べる。

「…………!」

 思わず目を見開いた。

「うまい!」

「そんなに?」

「うまい!」

 俺は夢中で食べ続けた。

 セリナも一口食べる。

「……確かに美味しいわね」

「だろ?」

「でも、こんなに食べるとは思わなかった」

「まだ食べられるぞ」

「えっ」

 セリナが笑う。

「ガルドって、もしかしてかなり食べる?」

「普通だと思う」

「またそれ?」

「何が?」

「なんでもない」

 セリナは楽しそうに笑った。

 食事を終え、宿へ戻る道。

 セリナがふと口を開いた。

「ねえ、ガルド」

「ん?」

「明日、もう一度依頼を受ける?」

「もちろん!」

「じゃあ、少し難しい依頼を探してみようか」

「肉が出るやつがいい!」

「そこは譲らないのね」

「大事だからな!」

 セリナは笑った。

「じゃあ、明日ギルドで探しましょう」

「ああ!」

 俺は頷く。

 このとき俺はまだ知らなかった。

 翌日、ギルドで受けることになる依頼が。

 俺たちの冒険を、大きく変えることになるなんて。

 そして――。

 冒険者ギルドではすでに。

 新人冒険者ガルドについて、別の噂が広がり始めていた。

「……あの新人、ホーンウルフを一撃で?」

「しかも、あの大剣を軽々振ってたらしい」

「一体、何者なんだ?」

 本人だけが。

 その噂をまったく知らなかった。

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この記事を書いた人

Web小説書いてます。最強・ファンタジー・冒険・ほのぼの・飯テロが好き。Xアカウントはこちら→

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